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若冲と江戸絵画展 [レヴュー/博物館]

極彩色の青に、優雅な白い像。
鳥たちは歌い、空には空想の動物が浮遊して、
大も小もみんな、生きとし生けるものすべてのパラダイス。
そんなユートピアみたいな「鳥獣花木図屏風」を
初めてみたのは2003年10月に開催された「ハピネス」展
(六本木森アートミュージアム)だった。
2000年に京都国立博物館で開催された展示をきっかけに、
それまでアメリカのコレクターの下で生き長らえていた異端児、若冲は
すでに日本の愛好家の間でも人気が沸騰し始めていた。

南国みたいな極彩色に「これがほんとに江戸時代に描かれたの??」
という疑問と、その迫力に圧倒されることに終始してしまった2003年。
だって、一隻を4300個もあるという細かい四角で区切った
若冲独自の技法「桝目描き」は
画面の全てを細かいタイルのように分割し、鳥たちの羽も
グラフィックデザインを見ているみたいに斬新に彩られている。
そんな遊び心に溢れているから、
私たちが抱いているステレオタイプの「江戸時代」とは
雲泥の差があるんだろう。
見る人が驚くのもまた、然り。

それから3年後。こころの準備を整えつつ・・・、
永沢芦雪、森狙仙や琳派の作家たちと共に
改めて若冲に出会うことが出来た。

今回の展示は全5章で構成されている。
第1章、2章で正統派絵画と京の画家を堪能し、
人の波にゆられながら第3章へ。
朝いちで出かけたのに、混みすぎていて、すでに牛歩。
行列の前方から波及する感嘆に、私の期待も徐々に高まる。
今までとは醸し出す空気が、圧倒的に違う。

人の合間からかいま見えていたその屏風は、待ってました!
果たして「花鳥人物図屏風」と「鶴図屏風」だった。
筆のかすれと豊かな墨の濃淡が画面全体にリズムを作りだし
時に激しい音楽になり、時にか細い旋律になる。
単調に陥らない絶妙のバランス。
墨と墨の間にある空間が、描かれないことによって際立つパラドックス。
大胆と繊細、緻密な写生と途方もない想像力。
相反する二極のダイナミズム。
そして、今回ポスターに使用されていた「紫陽花双鶏図」も
本物でしかわからない色彩、息遣い、漲る力・・・。

描かれた当初から何世紀経た今でも変わらずに画面からおし寄せる気迫に、
展示中盤にしてかなりノックアウト。
続く第5章では「改めて名作を見る」という新しい試みのもと、
明暗を変化させたライトの下で琳派の名作たちが
会しているというのにちょっと食傷気味・・・。
いつものように、序盤から飛ばしすぎ
最期まで集中が持たないという
己の欠点が露呈されてしまった一日(反省)。
みなさまには、落ち着いたこころもちで見ていただきたいと思いました。
なぜって、企画展だけではなく、本館・東洋館の 特集・常設展も質・量ともに素晴らしいんです!
常設はいつもないがしろにされ勝ちですが、
その美術館の動向を知るには常設を見るのが一番と言いますものね。
お勧めは尾方光琳「八橋蒔絵螺鈿硯箱」(国宝)のある本館一階の
平常展。そして 暮らしの調度—安土桃山・江戸
浮世絵と衣装(鈴木春信や勝川春章などの名作がざくざく登場)などなど。

東洋館、本館と一日かかっても見きれない。
日本のルーブルここにありです。

さてさて冒頭の若冲ですが、
皇居内三の丸尚蔵館においても「動植綵絵」が平成6年からの修復を経て、
現在無料で展示が行われています。
全30幅の作品を5期にわけて展示しています。
こちらもお見逃しなく!
************************
「花鳥−愛でる心、彩る技 <若冲を中心に>
●ところ:宮内庁三の丸尚蔵館
●第4期:7月8日(土)〜8月6日(日)
●第5期:8月12日(土)〜9月10日(日)
●休館日 : 毎週月曜日・金曜日
************************
※若冲と江戸絵画展 2006年7月4日ー8月27日 東京国立博物館・平成館にて


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「書の技法」-王義之の妙、顔真卿の技- [レヴュー/博物館]

「書の道では字に気が満ちて血が通うものを尊ぶ」
(欧陽通(オウヨウトウ)・道因法師碑より)

これは、初唐の三代書家のひとり欧陽詢の子、欧陽通の言葉である。
たった一本の線のみでも成立する芸術は古今東西ひろしと言えども、
「書」を除いて、そうそう見当たらないのでは?
線の美学、「書く」文化の根源を探るべく、
鶯谷にある台東区立書道博物館で行われている「書の技法」展に赴いた。

この博物館は洋画家でもあり、また書家でもあった中村不折のコレクションに基づいている。
漢字の基となった殷(BC17)の甲骨文字から始まり、
青銅器、仏像、碑碣、石経、経巻文書、はたまた国の重要文化財12点を含み、
書のみならず東洋美術史上貴重な資料もここに収蔵されていることは
あまり知られていないのでは・・・?
本館では金石学に関係する石碑や墓標が裸のまま展示され、
静として屹立するそれらに想像もつかない圧倒的な歴史の重厚さを感じる。

本館に併設した不折記念館では企画展が開催され、
今日でも人気を博する王義之(オウギシ)、顔真卿(ガンシンケイ)の書や
韓仁銘(カンジンメイ)の隷書(レイショ)が拓本※を中心として展示されている。
このように改めて書を見てみると、筆に含む墨の量を変化させ(褐筆、潤筆という)
互いに際立たせ、立体感をもたせた文字は平面と文字が生みだす
高度な芸術だということに気付かされる。
覚えずこちらの呼吸もとまってしまいそうなほど、
草書などに見られるように、連綿と続く文字や、隷書の「払い」に秘められた力強さ。
先人が書いた書に近づきまた追い越さんと、臨書※を繰り返し
ひたすら書と向かい合っていた姿が彷彿とされ、冒頭の欧陽通の言葉が思い出されます。
書は一日にしてならず。
否、その姿勢は「道」とつくすべての芸ごとに通ずるはず。
時は流れ21世紀。もはや「紙に書く」ではなく、端末相手に文字「打つ」御時世。
そんな中、敢えて硯に向かうのもまた、一興ではないでしょうか。

「一」だけでも種々の字体が
「五體字類」と和triko
王義之の草書
「法帖第一」東晋時代
なんと流麗な!
王献之「地黄湯帖」東晋時代

 
Photo :Triko with 和triko

※拓本:凸凹した面に紙を貼り付けて墨をつけて文字を写し取ること
※臨書:手本を見て字形を追究する「形臨」手本の筆意を汲む「意臨」
    記憶によって手本の書風を再現する「背臨」がある

※中村不折コレクション「書の技法」-王義之の妙、顔真卿の技-(2006年4月29日-7月2日)
 台東区立書道博物館
※次回展示は「不折と子規・鴎外・漱石」(2006年7月8日-9月30日)
 不折は「我輩は猫である」の挿絵や鴎外の墓石の文字を手がけています。
 文学マニアの方も必見ですよ!


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